イベントレポート
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【レポート】おおさか市民環境大学2022 第1回
12月17日(土)にZoomでのオンラインで、「おおさか市民環境大学2022 生物多様性とゼロカーボン社会~子どもたちに残したい未来~」を開催し、31名の方にご参加いただきました。
4連続講座の第1回である今回は、大阪市環境局環境施策部環境施策課の三原眞課長による主催者挨拶で当講座の目的や趣旨をお伝えしたあと、大阪市立自然史博物館学芸課長である佐久間大輔講師による、講演が始まりました。
講演タイトルは「私達の街から緑と生きもの、地域と地球をつなげて考えてみよう」ということで、大阪府や市がそれぞれ制定した大阪府新環境総合計画と大阪市生物多様性戦略を読み解き、その中身と実効性、活用の可能性を検討してみようというものです。
佐久間講師は、今回の参加者が環境問題に知識のある人とそうでない人が入り混じっているということから、初めての方でもわかりやすいところから始めると告げられ、左のような内容でまずは紹介されました。
「自然のしくみを知って、生態系の循環をなるべくはみ出さないように、はみ出したとしても乱さないように気を付ける、これが基本になる」とのことでした。
江戸時代の里山というのは、自給自足という意味での山ではなく、都市の需要に対応するために山の使い方がそれぞれの地域で変わっている印象があるとの話がありました。
右のスライドは江戸時代の大坂に運ばれる薪炭の量。
「大坂に売るために、周辺地域で炭を焼き、薪を育てる文化があった。江戸時代の都市大坂が、西日本の里山に影響を与えていたように、現代の大阪は世界中の自然にも影響を与えているという関係にある。」と説明されました。
また、童謡や童話に出てくる数々の日本で昔はどこにでもいた生きものたち(ドジョウ・メダカ・キツネ他)も、最近は姿を見なくなったことに触れ、「自然を失うというのはその文化を失うことにもなる。」と述べられました。
さて、行政の施策の話となり、まず大阪府の新環境総合計画の中では、「策定から2020年度までの計画の、実際の目標達成内容を明確に記されている。それに対する課題もしっかり書かれている。ここままではうまくいかないので、変えていく必要があることも書いて頂いている。」と佐久間講師は評価されました。
大阪市の生物多様性戦略にも、
「基本戦略Aは生物多様性の発見と行動の展開、ちゃんとみんなに気付いてもらわないと無理だよね。
基本戦略Bは自然空間の保全・創造、田んぼが減ってるからどうしよう。
基本戦略Cは生物多様性に配慮した生産・消費への変革で大都市大阪だから考えないといけないよね、ということで大都市らしい良いテーマです。
基本戦略Dでは都市・地球環境問題に対する取組み、地球環境の変化ということもちゃんと理解しよう、ということで戦略を立てている。」
と、戦略の策定時に事務局の支援をしていた佐久間講師はコメントされました。
また、「方向性としてはしっかり立てて頂いていると思う。ですが、いろいろなところで行われている今までの活動の寄せ集めでしかない。今までうまくいっていないなら、この10倍やらないといけない、ただ10倍の努力はというと、皆それぞれ頑張ってね~になってしまっている。このための特別な予算があるわけでもないし、特別な取り組みがあるわけでもない。」「実効性のある取り組みができているの?施策の社会的効果をきちんと検証しながらできている?というとまだまだ難しいところである。」と厳しめの評価を頂きました。
佐久間講師の講演の後は事務局より、大阪市の所有する環境活動推進施設、なにわECOスクエアの紹介を致しました。大阪市生物多様性戦略内には、生物多様性体験学習施設としてこちらなにわECOスクエア内にある自然体験観察園が位置づけられています。おおさか市民環境大学第1回目である今回は、自然体験観察園のプロモーションビデオを見て頂きました。
さて、佐久間講師からはレポートでは紹介しきれないほど、他にも重要なお話が多々ありました。
参加者のアンケートからは、「佐久間さんからの環境局への叱咤激励を、環境局がどう受け取られたかを聞きたかった。戦略の社会実装の重要性、策定段階での情報共有、生物多様性の保全に向けたネットワーク会議運営改善への示唆に富んだ鋭い指摘がよかった。」といった一歩踏み込んだ感想や、「行政とはまた違う視点からの話で、とても参考になりました。今までいろいろな話を見聞きしてきましたが、それで何をするのか?というところで納得するor是非参加したい場所がない・・というのが現状です。」という過去の経験も含めた感想、「具体的にはすぐには思いつきませんが、日常から生物多様性にもっと意識を向けていきたいと思いました。」という環境マインド向上に繋がる感想などが多数あり、今回の講座は市民と行政を近づけパートナーシップを築くことのできるいい機会となりました。
■講演後に参加者より質問を1件頂戴しておりますので、内容と回答を以下に掲載いたします。
<質問>
大阪府市の生物多様性地域戦略では、問題点はしっかり整理できているが、政策面でやっている施策の寄せ集めであること、社会がのれるものになっていないというご意見が印象的でした。
他市の生物多様性地域戦略で、課題整理と、目標、政策がしっかりかみ合っている事例があれば教えて頂けますか。
また、温暖化は自治体あげての取り組みをしているところが多いように思うのですが、生物多様性について力を入れて取り組んでいる自治体があれば教えてください。
<回答>
佐久間です、質問ありがとうございました。
生物多様性戦略は各地色々模索している状況に思います。
どこかベストなもの、というのを上げるのは難しいです。
大体において改定を重ねているところは段々と施策レベルの落とし込みも深まり良くなっているという印象です。
神戸市や京都府、京都市や堺市など近隣のものと読み比べてみるのも良いでしょう。
立地条件による違いも大きいと思います。
農村部を抱える自治体と都市だけでできた自治体とはかなり取り組まなければならない項目が変わります。
都市と郊外の両方を抱えた、自治体はそうした観点から地区ごとに異なる目標を明確化するなどしています。
例えば倉敷市の事例は地区ごとの事情に言及するとともに、市民の参加目標をかなり明確にしています。
京都府
https://www.pref.kyoto.jp/shizen-kankyo/senryaku.html
京都市
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000282470.html
神戸市
https://www.city.kobe.lg.jp/a66324/kurashi/recycle/biodiversity/index.html
倉敷市
https://www.city.kurashiki.okayama.jp/tiikisenryaku/
こうした中においてほぼ全体が都市になっている大阪市は特殊な事例とも言えます。
東京都の各区が作っている戦略と比較してみるのも良いかもしれません。
https://www.city.minato.tokyo.jp/ryokukasuishin/tayousei/strategy.html
佐久間が都市の生物多様性戦略として課題とチャンスと考えることはこちらにまとめています。
参考にしていただければ幸いです。
https://researchmap.jp/sakuma_daisuke/published_papers/17845149