地域の宝イタセンパラ
大阪市内に天然記念物が生息
大阪市内を流れる淀川には、イタセンパラという貴重な淡水魚が生息しています。コイ科のタナゴの仲間で、国の天然記念物に指定されるとともに、絶滅危惧IA類という絶滅危惧種の中でも一番上のランクに指定されており、全国でも、濃尾平野と富山平野と淀川水系にしか生息していない魚です。
淀川のシンボルフィッシュとも呼ばれてきたイタセンパラは、平成29年1月1日には大阪市旭区の魚に認定されるなど、注目を浴びています。
〇大阪市旭区ホームページ
「イタセンパラ」を区の魚に制定します!
イタセンパラのユニークな生態
秋の産卵シーズンになるとオスの腹部は赤紫色に変化、メスは産卵管がしだいに伸びてゆきます。メスは主にイシガイという二枚貝に卵を産み込みます。貝が呼吸するために使う管に産卵管を差し込んで一気に産卵し、その時、オスが貝に向け放精するといったユニークな生態をもっています。これは、主にタナゴの仲間で見られる産卵方法です。4~5日ほどで孵化したイタセンパラの子どもは、そのまま貝のゆりかごの中で冬を過ごし、翌年のゴールデンウィークの辺りに貝から出てきます。貝から泳ぎ出た後の成長はとても早く、その年の秋には成熟して産卵します。
イシガイたち(小さい鋭角のものはカワニナ類)
イタセンパラの危機と市民による保全活動
イタセンパラは川の氾濫原を中心に生息していたのですが、近年の河川改修により水量を管理された淀川では川が氾濫しなくなり、繁殖しづらくなりました。更に追い打ちをかけるように大繁殖した外来種のオオクチバス(ブラックバス)、ブルーギルに食べられてしまう影響などで2005年を最後に一時期は淀川で姿が見られなくなりました。
イタセンパラの棲む淀川城北ワンド 2017.6.3撮影
そこでイタセンパラの野生復帰を目的に、市民、研究所、行政などで構成されたボランティア団体が2011年に設立され、三位一体となって外来生物の駆除やごみ拾いなどの活動を開始しました。2013年には、府の施設で飼育されていた淀川固有の遺伝子を持つイタセンパラが放流され、その子孫たちは今も淀川で立派に成長しています。
※イタセンパラの野生復帰は国土交通省淀川河川事務所と大阪府立環境農林水産総合研究所が共同で実施しています。
このような保全活動を継続しなければ本来の自然の姿に近い淀川が維持できないという外来種問題などの現状があります。地域の宝として守り続けようとする人たちがいるから、こういった美しい生きものが後世に伝えられるのですね。
◆保全活動情報
淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク(イタセンネット)
〇活動日
4~11月までの
第1土曜日、第3日曜日(基本)
※新型コロナウィルスの影響がありますので、最新の情報はブログでご確認ください。
〇イタセンネットブログ